9.神の天使たち

8.再び家へ!
10. 過大なストレス

コラム 「ミッションパイロット」  デイビッド・ゲイツ氏の証より

合衆国にいる両親を訪ねて短い休みをとった後、デイビッドとベッキーは、セブンスデー・アドベンチストのインカユニオンから、ペルーに戻るようにとの要請を受けました。「私たちは、誰かユニオン全体のコンピューターによる奉仕を指揮する人を必要としています。どうか来てリマで私たちと共に働いてください」

この任務はデイビッドにとって、ほとんどが旅行続きの日々となることを意味しました。彼が持っているコンピューターの専門知識を求める緊急要請は、途絶えることなく来ました。彼は1ヶ月家庭から離れ、1ヶ月はオフィスに、それからまた1ヶ月出て行き、再びオフィスに戻るという具合でした。時間に追い回される忙しい奉仕の中で、家族との貴重な時間や神様との交わりの時間が奪われました。

神様は信仰と信頼について、デイビッドにさらなる教訓をお与えになったでしょうか?デイビッドは完全に神様に頼り、また神様とのいっそう密接な関係を重んじていたでしょうか?全生涯を神様に明け渡すことを彼は学んだでしょうか?

ある日リマで車を運転しながら、デイビッドは側道から、交通の激しい5車線道路に車を乗り入れました。左をちらりと見た彼は、自分の頭をピストルが狙っているのを見ました。およそ30センチ向こうにある銃身を見下ろし、息が止まりました。撃たれるだろう、これで終わりだと彼は思いました。彼はブレーキを踏みました。後ろの車も同じようにブレーキを踏みました。ピストルを持った男はそのまま走り去りました。

後になって、彼は、銃を持って逃走しようとしている銀行強盗たちとすれ違ったのだということがわかりました。彼らが車の合間を縫って走り抜けている間、ひとりの男がそのピストルを他の車の運転者たちに向けていました。どの車も速度を落とすか停車して、強盗たちは逃げ、通りの向こうに消えました。デイビッドは神様の臨在を感じ、天使に感謝しました。

別の日の午後、リマの下町にいたデイビッドはメッセージを受け取りました。「船便で送られたコンピューターがカラオ港に入った。引取りに来るように」

彼は、スターターが働いていなかったにもかかわらず、古いステーションワゴンを運転してその町へ来ていました。リマでは新しい自動車部品を手に入れるのはむずかしいのです。問題箇所を直す方法はそれを組み立て直すことでした。彼は、スターターのコイルを巻き直す電気工のところへ、それをすでに持って行ってありました。巻き直しには時間がかかるとのことでした。彼には他の車はなかったので、だれかに押してもらってエンジンをかけ、スターター無しの車を運転しなければなりません。大学へ戻るには距離があり、カラオ港には近いとわかり、彼はやってみることにしました。きっと、コンピューターを積んだ後、だれかが発進を手伝ってくれるに違いありません。

彼は無事に港に着きました。彼はできるだけすばやく書類に記入し終えて、税関を通過し、そのステーションワゴンに時価7万ドル分のコンピューターを積み込みました。大いに必要とされていたこれらの機器はミッション、大学、その他の諸々の学校、また病院に配られることでしょう。きわめて必要の大きかったこれらのコンピューターのためのお金をささげるために、どれほど多くの人々が犠牲を払ったことだろう、と彼は思いました。

それらを積み込みながら、彼は周りの子供たちの言葉をいやでも聞かないわけにはいきませんでした――下品で、不愉快な、子供にも大人にも不似合いな言葉を。気がかりが彼の心を満たしました。(もし子供たちがこんな話をするなら、大人たちの世界の道徳はどんなだろうか?カラオはいつも荒っぽい地域だ。そして町のこの区域は、大学に向かっていくにつれてますます危険になる。)

重い荷物を積んだ車を発進させようとして、彼は3人の男を見つけ、押してもらいました。街路に出たとき彼は、神様に、(あなたは「主の使は主を恐れる者のまわりに陣をしいて彼らを助けられる」と約束してくださいましたね)と心の中で語りかけました。そして彼は声を出し、「神様、私は車中にいてこのスラム街を通り抜けているを感謝します」とつけ足しました。

そのすぐ後、計器盤の赤いライトが点滅するのが見えました。エンジンが高熱になったことを知らせています。それからエンジンは激しい音を出して止まってしまいました。彼は道路から外れ、砂利のところに車を停めました。周囲を見回すと、脇に車輪のない古いバスが放棄されている坂道に停車したことがわかりました。そのバスは多分20年くらいそこにあって、田舎の麻薬中毒者の溜まり場になっているようでした。彼は時計を見ました――6時10分前でほとんど日没。

彼はすばやくネクタイをはずし、スーツの上着を脱ぎ、大きな声で、「神様、私はここよりは他の場所の方がましです。私と共にいてください」と言いました。彼は近くの店に駆け込みました。店番は、彼のような人が夕暮れ時の町で何をしているのかと怪しみ、気違いではないかというような目で見ました。

デイビッドは、「どうか水をください、車に必要なのです」とあわただしく言いました。
その男はバケツを見つけて水を満たしてくれました。デイビッドはラジエーターにその水を注ぎ入れました。彼はバケツにもう一杯の水を持って戻り、再び注ぎました。しかしラジエーターは一杯になりませんでした。車の下を見ると、フリーズプラグ(砂抜きプラグ)の穴から水が流れていました。そこで彼は、大変なことになったと思いました。車に水を入れる方法はなく、スターターはなく、リマの店は全部6時には閉店します。

どうしたらよいものか思案しながら立っていると、店番が門を閉め、夜間に備えて錠をかけるガチャガチャという音が聞こえました。彼は通りを見渡しました。店はひとつ残らず戸締りがしてあります。その区画の向こうを見ると、ひとりの男が角を曲がって消えて行きました。彼はそこにひとり立ち尽くしていました。

彼にあるのは、ただ一つの解決法だけでした。「ああ、神様、あなたは私が大変なことになっているのをご存知です。この車を発進させる方法は何もなく、あなたのみわざのために使われる7万ドル分のコンピューターがそこにあります。あなたの助けがどうしても必要です」

ちょうどその時男がふたりバスから降りてきました。デイビッドは、彼らが2つの大きなゴツゴツの岩を持ち上げるのをじっと見ました。ひとりの男は車の向こう側へ一方からまわって行き、もうひとりが反対側にまわって行きました。デイビッドは、リマではいかにしばしば暴行が行われるか知っていました。ほんの数週間前のことですが、友人たちと一緒にいたとき、数人の男がパイプや鎖や銃を持って彼らに近づいて来ました。ひとりが石を彼に投げました。それを見たデイビッドは、ちょうどうまく身をかわし、石は音を立てて彼の頭の後ろに飛んで行きました。

今、ステーションワゴンの傍らに立ち、彼は、ゴツゴツの石がこめかみに当たれば大怪我をすると思いました。彼には彼らの意図がわかりました。デイビッドが武器を取り出すかどうか待っているのです。

彼らがゆっくりと近づいて来たとき、デイビッドは考えました。(主よ、あなたは友のために命を与えよと言われましたが、寄贈されたコンピューターについては何もおっしゃいませんでした。これらの機器は私の家族に値しません。私はただのコンピューターのために命をささげなくてもいいのです。これを残して行くべきでしょうか?あなたの財産を尊重しますが、命と交換したくはありません。もしあなたがあなたの機器を守りたいのであれば、あなたがなさってください。私にはできません。)

彼は一歩後ろに下がりました。するともうひとりの人にドンとぶつかりました。(彼ははどこから来たのだろうか)と思いました。ちょっと前には石を持った暴漢しか見ませんでした。彼はその人が手を自分の肩に置くのを感じました。デイビッドはすばやく後ろを振り向きました。その人の顔は彼をはっとさせました。彼はそのような顔を今まで見たことがありませんでした。欠点のない、完璧な顔。彼は自分を見ているその顔をびっくりして凝視し、暴漢たちのことをすっかり忘れました。

「あなたの命が危険です。去らなくてはいけません」
「わかっています。あなたの言うとおりです」とデイビッドは叫びました。「ですが、私は行けないのです。エンジンが動かず、スターターはなく、押してくれる人はだれもいません」
「私が押しましょう。車に乗ってください」
「あなたに押すことなど無理です。ステーションワゴンはとても重く、荷物が一杯積んであるのです。港で発進するのに3人がかりだったのです。それに、砂利の上に駐車してあり、しかもそこは上り坂です。あなたにできるはずがありません。私は、あいつらがあなたに石を投げはしないかと心配です」

デイビッドはふたりの男が動かずに、凍ったように立っているのをちらりと見ました。おかしい、と彼は思いました。(なぜ彼らは動かないのだ?彼らはロトの妻のように塩の柱になってしまったのだろうか?)

その人がまた言いました。「お乗りなさい。私が押しましょう。私はこの者たちを知っています。彼らはとても危険です。彼らは4人であの古いバスに住んでいます。彼らは満員のバスを襲ってきたばかりです。彼らは戻ってすぐ、あなたがここに立っているのを見ました。そしてあなたの機器を欲しがっています。私はあなたの車を押しに来ました」

彼がどれほどのことを知っているか困惑しながら、デイビッドは同意し、「わかりました、でも発進しないでしょう」と言いました。その人の命を心配しながら、デイビッドは彼が車の後ろに行くのを見ていました。ところがふたりの男は動きません。石を持ったまま立っているだけです。デイビッドは、リマのスリや泥棒が普通するやり方を思い出しました。だれかが略奪に現れて、「気をつけろ、だれかがお前の物を取ったぞ」と叫ぶと、もうひとりが指の間に三枚のカミソリの刃をテープで止めて後ろからやってきます。彼らは助けを求める人の顔に切りつけて、皮膚が顔に垂れ下がったままにしておきます。この恐ろしい考えがデイビッドの頭を一杯にしました。(彼らはあの完璧な美しい顔に切りつけるだろうか?)

その人に押せるはずがないとわかってはいましたが、彼はキーを回しました。彼は車が動くのを感じました。そこでセカンドギアに入れました。彼は依然として、(発進できない、エンジンはかからない)と懐疑的悲観的に考えていました。ところが彼がクラッチを離した瞬間、モーターがまるで完璧な走りをしているような快適な音を立てました。

彼がブレーキを踏むと、その人は「ここから出なさい。急いでください!どうか、急いで!」と叫びました。
デイビッドは車の窓を下げました。「リマではご好意に支払う習慣があります。私はチップを払わないでは去れません」
「チップはいりません」とその人ははっきり言いました。「さあ、行きなさい。命令です」
頑としてデイビッドは、「いいえ、チップを払わなくては」と言い張りました。
デイビッドは彼のところに走って行き、数ソルを手渡しました。その人は、「どうかここから出て行ってください。さあ、行きなさい!」と懇願しました。

今度はデイビッドは言うとおりにし、丘を下る主要道路に向かいました。2区画ほど走るとエンジンは変な音を出し、また止まってしまいました。彼はガソリンスタンドまで惰力で走らせました。車を明るい区域に止め、彼を救いに来た人のことを考え始めました。

彼は事実をまとめてみました。完璧な顔をしたその人はどこからともなく現れました。彼はデイビッドの問題を理解しており、ふたりの犯罪人と彼らの恐ろしい前科、そして彼らがしようとしていたことを知っていました。何があの男たちふたりを、石を持ったまま凍りつかせていたのか?砂利の上にある重いステーションワゴンをひとりの人が押すことができたのは、超自然の力によったのだということを、デイビッドははっきり理解しました。すべての細部が美しいパズルのようにぴったり合いました。

詩篇139:5の言葉が頭の中に満ち、彼を驚かせました。「あなたは後から、前からわたしを囲み、わたしの上にみ手をおかれます」天使が本当にその手をデイビッドの肩に置いたのでした。

ありがたい気持ちで、しかし自分の鈍感さを恥じ、デイビッドは、助けを求めたのにそれが聞かれたと気づかないご自分ののろまな子の世話をするために、力ある天使を送ってくださった天の父に感謝しました。

デイビッドは家に向かう途上で少し自己吟味をしました。(なぜ自分の人生は保護天使を困らせるように見えるのだろう?私は、保護天使を休ませたことがないのではないか?もし天使が眠るとしたら、私の天使はほとんど眠れない。神様が私を選んで、危険のある奉仕の最前線へ押しやられたからということがあるだろうか?愛のうちに神様は私の命を救おうと介入して天使を送ってくださる。私は、難しくしようとはしないが、危険な任務を引き受けるのをためらうことはめったにない。)

(より大きな信仰をもって冒険に踏み出すようにと神様は言っておられるのだろうか?私が受けるに値しなくても、格別の助けを、神様は送ってくださった。しかし私に神様のご臨在を認めないようにさせたのは何だろうか、私が議論せずにすぐに神様の指示に従って行動するのを妨げているのは何だろうか?何が欠けているにせよ、神様、どうか私にそれを示してください。)

2週間後、北ペルーミッションへの旅行を終え、デイビッドはリマのバス停に着きました。彼は、彼らのコンピューターのために彼が書き込んだ会計システムをインストールしてきたのでした。バスで一晩中旅行をし、昼ごろバス停に到着しました。リマのバス停は市内の真ん中の非常に危険な区域にあります。悪いことに、タクシーの待合所まで行くのに、町の物騒な区域を通って3、4区画歩かねばなりませんでした。書類かばんを持ち運びながら、彼はひとつの問題に気づきました。バスに乗っていて、彼は何時間もの間トイレに行くことができませんでした。どうしたらいいでしょう?

通りをあちこち見て、彼は背後の路地に小さな公衆トイレがあるのに気づきました。そこへ行くには危険で物騒な区域を通らなければなりません。誰一人見えなかったので、走って入り、走り出よう、そうすれば誰も気がつかないだろうと彼は考えました。同時に彼は、このように一か八かやってみるのは、鮫の溜まり場で血を流している人のようなものだということも認めました。

彼は急いでその路地に歩いて行き、ドアのところにいる案内人にいつものように10セントのチップを渡しました。(15秒だけここにいて、それから早く去ろう)と考えながら、彼は中に走り込みました。

ところがだれかが彼に気がつき、外で騒いでいるのが彼の耳に聞こえました。ちょうど彼がまったく無防備の姿勢で立っていたその時、頭の周りに赤いバンダナを巻き、手づくりの剣を手にしたひとりの男が彼の後ろに走り寄りました。デイビッドは防ぎようがありませんでした。彼は、その男が書類かばん、時計、そしてポケットにあるもの全部を欲しがっているのがわかりました。

剣を突きつけて、デイビッドに近づいたちょうどそのとき、強盗を働こうとしていたその男は立ち止まりました。彼はデイビッドだけが立っていると思っていました。デイビッドもまた自分しかいないと思っていました。今、デイビッドは、自分よりずっと背の高い何者かを見上げている泥棒をじっと見ました。男の顔は白く変わり、その口は開いたままでした。彼は剣を下に向け、それを背後に持ちました。後ずさりしながら、彼は、恥じ入っているかのように隅に顔を向けて、おとなしく立ちました。

デイビッドは用を足し終わるとすぐ、書類かばんを手にして外に出ました。案内人は驚き、彼を呆然と見ました。彼はデイビッドが生きて出て来るとは思っていませんでした。デイビッドは急いで大通りに向かいながら、守護天使の臨在をもう一度経験したのだということに気がつきました。彼には見えなかったけれども、あの泥棒は天使を見たのだということがわかりました。

「ありがとうございます。お父様」と彼は歩きながら祈りました。
「私の必要を満たすために、天の使いをお送りくださるおかたの臨在の中に生きる特権を感謝します。私の周りに陣を張る天使を送り、私を救ってくださることを感謝します」

タクシーに乗って家に帰る間、デイビッドは神様との関係を壊し得ることすべてについて考え続けました。(任務で忙しすぎて、神様の言葉を学びまた祈るという意義ある時間を毎日とっていないのではないか?空いた時間を、雑誌や新聞や書物を読んだり、また霊的事柄を味わうのを遠ざけるテレビやビデオを見たりするのに使っているだろうか?友人が私をイエスから引き離すのを許しているだろうか?私の飲食の選択は頭脳を明晰にし、私を霊的に攻撃しようとするサタンの努力に対して目覚めていることができるようなものだろうか?私は、神様の愛のみ腕の中にいつも包まれているという尊い関係を楽しんでいるだろうか? )彼は声に出して、「私がすることすべてにおいて、あなたに栄光を帰すことができるようにお助けください」と祈りました。

8.再び家へ!
10. 過大なストレス