1. ハイジャック!

はじめに
2.回顧の時

コラム 「ミッションパイロット」  デイビッド・ゲイツ氏の証より

「きれいですね。教授!霧が高原をおおっていますよ」。

20代半ばのアメリカ人ミッションパイロット、デイビッド・ゲイツは、セスナ185スカイワゴンの操縦席で前方にもたれかかり、地平線をじっと見つめました。厚い雲が南メキシコのシエラ・マドレ山脈の上に重くのしかかっています。

「このあたりは1日中、たくさん雨が降ったに違いありません」と彼は続けて言いました。「自分たちの病院の滑走路は小規模で、着陸するにはかなり危険です」とデイビッドははっきりしたボリビア訛りのスペイン語で、操縦席の隣に座っている年配のメキシコ人に話しかけました。

「機長!どうしたのですか?」

「滑走路が低地にあるので、もし丈の低い草が水で覆われていたら、表面は氷のように滑りやすいのです。たとえ着陸速度が遅くてもブレーキは使い物になりません。飛行機を制御できないし、木に突っ込むでしょう」。10年以上のパイロット経験から、デイビッドは直面している危険性がわかり、緊迫した面持ちで座っていました。

「それでは私たちはどうするのですか?」とチャンテ教授は尋ねました。

「その周辺を低空飛行で何度か旋回します。高台のほうに平坦な場所を見つけられるかもしれません」。飛行機は高度を下げ、雲の下に出ました。

「あそこですよ」と、彼は左側を指差しました。沈みかけている夕陽が教会病院、高校、看護学校をひときわ浮きあがらせていました。敷地の境界周辺に医者や看護師、その他の働き人の住んでいる家がひとかたまりになっていました。「滑走路の近くのあの小さな家がわかりますか?あそこが私の家族が住んでいる所です。きっとベッキーや子供たちが今空を見上げていますよ。飛行場で私のラジオの修理が終わらなかったので、彼女に電話することができなかったのです」。デイビッドはもう一度、今度はもっと低空で家の辺りを旋回しました。

「やっぱり思ったとおりでした。草地を水の膜が覆っています。あそこに着陸するのはもってのほかです。しかしまた無防地帯に飛行機を置いていくのも危険です。唯一安全な場所は格納庫の中です」。

「その通りですね。この数ヶ月の間に何機かの個人飛行機がハイジャックされたと聞いています」とセブンスデー・アドベンチスト教会学校の責任者である教授は同意しました。

「燃料計が最低使用燃料値を示しています。暗くなっているし、明かりがないので、どうするか今、決めないといけません」

その時、「あなたがたを召された方は真実であられるから、このことをして下さるであろう」という、デイビッドの好きな聖書の約束が頭にひらめきました。「ありがとうございます、主よ。どうぞ正しい決断ができるように助けてください」と、デイビッドは心の中で祈りました。

「病院に並行する道路があります。高台にあるし、乾いています。また夜のこの時間にはめったに車は来ません」。デイビッドは誰かが手を振っているのを見るまで、学校の上空を旋回しました。それから目を凝らして道路を見ました。1台の車もありません。地面に向かって降下し、着陸し、道路わきの広い場所に飛行機を止めました。まもなくひとりの教師と警備員がトラックで到着しました。

「滑走路に着陸しなくて良かったですよ。1日中雨が降り続いていました」と警備員は言いました。「私が今晩飛行機に残ります。中に閉じ込めて鍵をしめていいですよ」。

「いつでも出たいときに出られますよ。ただノブを回すだけだから」とデイビッドは言いました。

しかしおびえた声で警備員は叫びました。「いいえ、だめです。自由に出入りができることを誰にも知られたくありません。このあたりでは安全というものはないのですから」。

「私は朝早く戻ってきます。おやすみなさい。神様が共にいてくださいますように」と、デイビッドは呼びかけました。

デイビッドは青々と茂った緑のキャンパスを、砂利道に添って通り抜け、遠くに暗くなっていく山並みを見上げました。彼が家の木戸口に近づくと、「お父さん!お帰りなさい!」と幼い娘ふたりが喜びの喚声を上げました。1歳のカルロスは両手を広げて、丸々と太った足でヨチヨチと歩いてきました。みんなにこにこ笑っています。金髪の美しい彼らの母親が愛する人に会うために走ってきました。

デイビッドはひとりひとりを抱きしめ、それぞれにキスをしながら、「王様でもこんな出迎えはしてもらえないよ」と、喜びにあふれて言いました。ベッキーはみんなを夕食のテーブルに向かわせました。デイビッドがお祈りした後、ベッキーは子供たちの食べ物を整え、デイビッドの隣に座りました。彼女は彼の手を握りしめ、ほほえみました。

「あなたの飛行機が着陸する音を聞くといつもわくわくするの。そして神様に感謝の祈りをささげるのよ」

「僕は君の横に座って、君の美味しい料理を食べながら、子供たちのおしゃべりを聞いていると、天の喜びのようなものを感じるよ。今日起きたいろんな問題の後では、これは安らぎだね」。

食事が済んだ後、「片付けは後にして、さあ、リビングルームに行ってお父さんの話を聞きましょう」と、ベッキーが提案しました。3人の子供たち全員がわくわくして父親を見上げながら、膝によじ登りました。

「何度も何度も女の子の膿んだ歯を抜こうとしたけどダメだった。歯の根っこが曲がっていて、それが先のほうでつながっていたんだよ。あごの骨を砕かなければならないかもしれない。でも痛くて女の子が叫んだとき、できるだけ早く手術のできる歯医者さんと一緒に戻ってくると約束したんだ。その喜びようを見たら、今日あちこちたくさん立ち寄らなければならなかったけど、十分報われたよ」

「そんなに痛くてかわいそうに・・・。イエス様が治してくださるようにお祈りするわ」と、いつも同情的な小さいリナが話をさえぎりました。

「ありがとう。お祈りしてくれるとうれしいよ」。そしてデイビッドは続けて言いました、「教授とお父さんは、教授の助けを必要とし問題と向き合っている、遠く離れたいくつかの学校を訪問したんだ。明日もう少し訪問するところがある。明日は燃料が必要だから朝早く出発しないといけない」

「眠い人たちがいるようね。みんな寝る時間だわ。子供たちはお父さんになかなか会えないので、起きてあなたを待っていてもいいと言ったの」と、ベッキーが笑顔で言いました。

******

次の朝6時、ふたりの高校生がゲイツ家のドアをノックしました。

「機長。あなたの飛行機の周りに兵士がいます。あなたの書類を見たいと言っています」

「大丈夫!すぐにそこに行くと言ってくれないか」

デイビッドはベッキーの方を振り返って、「書類は確かに全部きちんと整っているから。えーと」と、指で数えながら言いました。「アドラの働きに感謝しているこの国の大統領の手紙は持っているし、加えてアドラからの信任状もある。民間航空の責任者からの認可も得ている。1つは移民局から、もう1つは税関から。ここで飛行機を運用するのに必要な書類は全部整っている」

デイビッドはドアのほうに向かって歩き出しました。それから立ち止まって、ベッキーのほうへ戻ってきました。「君にキスをするのを忘れるところだった。万が一、もう会えないといけないから、君にキスをしたい・・・」と、デイビッドは冗談を言いました。冗談を言ったものの、彼はしばらくの間ベッキーをしっかり抱きしめていました。ベッキーはそのことについて何もおかしいとは感じなかったと後で言いました。それからデイビッドは外に出て教授に会いました。生徒たちと一緒に彼らは、学校のトラックで飛行機を置いてきたところに行きました。

「おはようございます。皆さん」。デイビッドは飛行機のそばに立っている兵士たちに挨拶をしました。「私の書類を見たいのですよね。全部そろっていますよ」。責任ある立場の将校が書類を受け取り、注意深く見ました。そしてデイビッドが真実を言っていると認めました。デイビッドは名札でその将校の名前がゴンザレスであると気がつきました。

ゴンザレスは、「あなたは2年前にこの飛行機を操縦していたパイロットですか?」と尋ねました。

「いいえ。私はこの飛行機を1年半しか操縦していません。前のパイロットは2年ほど前に去りました。私はデイビッド・ゲイツです」。デイビッドの返事に、彼は困惑した表情をしました。将校が無線機で話している間、兵士たちは自分たちのトラックに戻り、寄り集まって話をしていました。それから兵士たちはデイビッドと教授のところに戻って来ました。「私たちは指示を待たねばなりません。ここで待っていてください」と将校が言いました。

「すみません、今日はいくつかの緊急要請が入っています。たった今電報が届き、ひとりの男性が危篤状態で彼を搬送しないといけません。また歯が感染症になっている女の子を助けたいのです」

「それでも、司令官が命令を下すまでここを動くことはできない」と将校は言いました。

デイビッドは遅れていることにイライラしました。兵士たちが待っている間、彼は気をもんで飛行機の周りを行ったり来たりしていました。彼は将校のほうを振り返って、「あなたたちは夕べずっとここにいたのですか?」と尋ねました。

「ええ」と答えが返ってきました。

「夕食か朝食は食べましたか?」と尋ねると、「何も食べていません」と将校は答えました。

デイビッドは兵士の数を数え、近くに立っている生徒のひとりを呼んで言いました。「病院に行って、これらの兵士たちのために10人分の食事を持ってきてくれないだろうか?彼らはおなかが空いている」。生徒たちはトラックに乗り込み、走り去っていきました。

しばらくして彼らは、兵士たちひとりひとりの朝食を携えて戻ってきました。デイビッドはそこを通り過ぎようとしていたトラックを止めて、ひと箱の炭酸飲料を買いました。彼はひとりひとりの兵士にそれを手渡しました。彼らの食事が終わり、ジュースを飲み終えると、将校ゴンザレスがデイビッドに笑いかけ、「おいしい食事だった。ありがとう」と、言いました。

やっと兵士たちは、無線で司令官の声を聞きました。トラックに駆け戻り、しばらくそれを聞き、そしてメッセージを持って帰ってきました。「司令官はあなたに特別な滑走路に飛ぶように言っています」

デイビッドはその場所の名前がわかりました。

「でもそれは閉鎖されている滑走路ですよ」と彼は答えました。
「司令官はそこで私たちと会われる」

不安の念がデイビッドを襲い、冷や汗が出てきました。武装した兵士たちに囲まれて閉鎖されている滑走路に着陸!何か恐ろしくひどいことのようだ。

「将校、むしろそこからちょうど5マイル(8km)離れている民間の滑走路に着陸したいのですが。私が別の滑走路に行く理由は何にもないし、書類は全部そろっているのはおわかりでしょう。だから問題は何にもないはずです」

「あなたはすぐ戻れる。司令官が書類を調べる間のほんのわずかの滞在だ」デイビッドは将校を信じませんでした。時間が経つにつれて彼はますます不安になり、彼らの要求を拒み続けました。

ついにひとりの兵士がデイビッドの背中に銃をつきつけ、「飛行機に入れ」と命令しました。

彼はもう選択の余地がないことがわかりました。議論は無駄なようでした。将校ともうひとりの兵士が飛行機の後ろの席に乗り込み、教授とデイビッドは操縦席に乗りました。

「習慣なのですが」とデイビッドは後ろの席の兵士ふたりを見ながら、「いつも飛行機に乗る前には天の神様の守りをお祈りしています。帽子をとり、目を閉じてもらえませんか?」と言いました。兵士たちはデイビッドに従いました。「天の神様、兵士ひとりひとりの上に、教授の上に、そして私の上に神様の祝福がありますように。天使が私たちを危険と悪から守ってくださいますように。イエス様のお名前によって感謝してお祈りします。アーメン」。

デイビッドは懸念を抱いたまま離陸しました。修理のために無線を飛行機から取り外してあったので、彼の状況や目的地を誰にも知らせる方法がありませんでした。ベッキーと話すための何かが与えられていればよかったのですが・・・。

飛行中、デイビッドはあたかも無線で連絡を取り合っているかのように行動しようと決心しました。マイクを口のところに持ってきて、教区事務所を呼んでいるふりをしました。「どうぞ、私たちが閉鎖中の滑走路へ向かっていることを、今すぐメキシコ市に通告してください。書類上の問題があるのかもしれません。それを処理する弁護士を急遽送ってください」。

将校ゴンザレスはデイビッドの後ろに座っていて、ひと言ひと言注意深く聞いていました。彼はデイビッドが通じていない無線に話しているとは知りませんでした。「了解、了解。数分の内に着陸します。どうぞすぐに法的な助言者を送ってください」と、デイビッドは無線を終えました。

閉鎖中の滑走路に着陸することをいまだにためらいながら、デイビッドは後ろにいる将校に、「民間の滑走路に着陸します」と言いました。

「いけない。それはできない。私は指示したところに着陸するようにと司令官から命令されている」

「でもあなたは私にすぐ家に戻るだろうといいました。燃料が必要です。十分にありません」

「ダメだ!司令官の言ったところに着陸しなさい!」と彼はきつく言いました。

「だったらあなたは私を銃で撃たないといけませんね。私は他の滑走路に着陸しますから」将校ゴンザレスの動きがひどく神経質になってきました。

民間空港に着陸して、デイビッドは飛行機に燃料を入れました。彼は将校の携帯無線に叫んでいる司令官の声を耳にしました。「なぜ彼をそこに着陸させたのだ!」と、その声は怒って叫んでいました。

「パイロットが、燃料が必要だと言って命令に従わなかったのです」と、ゴンザレスは説明しました。

デイビッドは空港のタクシー運転手にそっと話しました。「注意して聞いてください。私はハイジャックされました。私の妻か教会病院の誰かに電話して、空軍基地に拘束されるだろうと思うと伝えてください」。デイビッドは誰かが彼を探し出してくれるだろう、あるいは適切な人に連絡してくれるだろうと確信しました。

飛行機の後部に4人の男を乗せ、デイビッドは離陸し、閉鎖中の滑走路に向かいました。着陸するや否や、デイビッドは頭がふらふらするような感情の波を感じました。ひとりの兵士が、「すみませんが、飛行機から降りて、ここに立ってください。手錠をかけるので両手を背中の後ろに回してください。あなたに目隠しをする間、おとなしく壁に向かって立ってください」と丁寧に命じました。それからデイビッドは、「彼の背中にマシンガンを突きつけろ。もし動いたらともかく撃て」というもう1つの命令を聞きました。

(これは現実だろうか?)とデイビッドは思いました。彼が身動きもせずじっと立っていると、兵士たちががさごそと音を立て、飛行機の中をくまなく探しているのが聞こえました。しばらくして彼らは、デイビッドと教授をトラックの荷台に乗せました。その地域の道路を知っていたので、デイビッドは、空軍基地に彼らを連れて行くルートに向きを変えていると気がつきました。彼は聖書が語っているバプテスマのヨハネの事を考えました。「この人はあかしのためにきた。光についてあかしをし、彼によってすべての人が信じるためである」(ヨハネによる福音書1:7)。(神様、どうかこれから何が起きようとそばにいてくださり、あなたを証しできるように助けてください)と彼は祈りました。

トラックが止まり、兵士たちは目隠しをしたままの彼らを連れて、低いドアの並んだ長くて狭い廊下を急ぎました。頭をぶつけるのを恐れて、デイビッドはできるだけ低く身をかがめました。やっと部屋に入りました。

「座れ!」と荒い声の尋問者が彼らに命令しました。しばらくして、看守がデイビッドを残したまま、教授を別の部屋に連れて行き、すぐに尋問が始まりました。1時間の間、兵士たちがデイビッドに質問をしました。それから今度は教授に1時間の尋問をしている間、デイビッドを他の部屋に移しました。このサイクルを何度も繰り返しました。デイビッドは、(これはよく練られた計画の一部だ)と心の中で思いました。

多くの的外れの質問に困惑しながらも、デイビッドは神様に知恵を求めながら注意深く答えました。

「お前たちはみんな善良な人たちなんだろう?」
「そうです」
「違法なことは何もしていないだろうな?」
「もちろんしていません」
「だがお前は聖書を配った」

外国人が聖書を配ることは法律で禁止されていると知っていたので、デイビッドは自分ではそのようなことは一度もしていませんでした。それで彼は、「いいえ、私は一度もそのようなことはしていません。私は有資格の看護師で、医療の働きをしています」と答えました。

「彼は聖書を配っていたと書け」
「もしそう書くなら、私はその書類にサインをしません」
「わかった。取り消せ」

尋問のやり取りは1日中続きました。ついに将校ゴンザレスはすべてを止めました。彼の声は親切そうでした。「この人たちは何も食べていないだろ?彼らは今朝私たちにおいしい朝食を食べさせてくれたのだ。少なくても彼らに昼食を与えよう。もうひとりの男を連れて来い。彼らの目隠しをはずして、手錠を前のほうに移せ。チキンサンドイッチでいいか?」

教授は「はい、ありがとうございます」と答えました。

デイビッドは「えり好みをすると思われたくないのですが、もしかまわなければ、私には卵サンドイッチを作ってくれませんか?」とつけ加えました。

「かまいませんよ。彼にはチキンサンドイッチを持ってこい。パイロットには卵サンドイッチをあげるように」。

サンドイッチを二、三口食べた後で、デイビッドは、ポケットに友人や教会指導者の連絡先が書いてある小さな紙切れを入れていたのを思い出しました。小さな字でたくさんの名前、電話番号そして住所が書いてありました。敵の手に渡ると情報が悪用されてしまう可能性がありました。彼は偽りの罪で教会関係者だれひとりとして逮捕されてほしくありませんでした。

(どうしようか?神様、知恵が必要です)と彼は考えました。アイデアが頭に浮かびました。部屋を見渡しました。兵士たちは自分たちの間で静かに話しをしています。彼は手錠をかけられた両手をポケットに伸ばして、小さな一片の紙切れを取り出し、それを卵サンドイッチに押し込み、そのまま食べました。噛み応えのあるサンドイッチを食べた後、彼はホッとしました。

食べ終わると、彼らはまた目隠しをされ、背中の後ろで手錠をかけられ、教授は尋問室に押し込められました。1時間サイクルの尋問がまた始まりました。午後遅く、デイビッドは尋問に対する教授の答えを初めて聞くことができました。たまたま誰かがドアを半開きにしておいたのでした。

「私はゲイツ機長をほとんど知りません。先日初めて会ったばかりです。彼が何をしているのか私は知りません」

デイビッドは身をよじりました。教授と彼は、デイビッドがミッションパイロットとして働き始めてから、ずっと一緒に親密に働いてきました。(彼は恐怖のあまり精神的に参っている。励ましが必要だ)とデイビッドは思いました。

兵士たちがさらに質問するためにデイビッドを連れにきたとき、彼は教授に話しました。「真実を話さないといけません。もしあなたが真実を曲げ始めたら、神様はあなたを守ることができません。あなたが偽りを言っていると彼が察知したら、あなたは自分自身を痛めつけることになります。私たちは天使が私たちを取り囲んでいるのを知っています。兵士たちは神様の許しがなければ私たちに触ることはできません。事実、今私たちは捕虜の身ですが、本当は彼らが捕虜であり、神様が彼らに許されたことしかできないのです。どうぞ、真実を話すことを恐れないでください」。

教授は顔を尋問者のほうに向けて、「すみません。私は真実を言うべきでした。私はデイビッド・ゲイツと一緒に仕事をし、彼をよく知っています。ほとんど2年間、私たちはすべての事を一緒にやってきました。どうぞ私の陳述を訂正してください。私は怖かったのです」と言いました。将校ゴンザレスは全てを削除しました。

それから目隠しが取り外されました。デイビッドは、秘書が古いタイプライターで20ページほどタイプしたのを見ました。兵士たちが言ったことからは、なぜデイビッドが逮捕されたかの手がかりはいっさい得られませんでした。

「それを読んで、あなたの署名をしなさい」と将校は言いました。

デイビッドと教授は命じられたとおりにしました。そして彼らはまた目隠しをされ、兵士たちにトラックの荷台に連れて行かれました。デイビッドは、彼らは刑務所へ向かって山越えの長いドライブをしているのだろうと思いました。町を通り抜けているときには周囲の音でそれとわかりました。たった数マイル離れたところに、彼の大切な妻と、小さな女の子ふたり、リナとカトリーナ、そして新しく養子にしたカルロスが彼を待っていました。父親のヤコブが住んでいる丘を過ぎ、商人がヨセフをエジプトに連れて行ったとき、ヨセフがどのように感じたか、今わかったような気がしました。デイビッドが神様の知恵と導きを祈ったとき、なぜ神様はこのようなことを許されたのでしょうか?神様はちょうどヨセフを送られたように、神様を知らない人たちへの証として、彼を見知らぬ所へ送る計画を持っておられたのでしょうか?

困惑し、寂しさを覚え、デイビッドは家族と一緒にいたいと願いました。心は破れんばかりでした。もう一度彼は家族に会えるでしょうか?

はじめに
2.回顧の時