8.再び家へ!

7.長い、長い夜
9.神の天使たち

コラム 「ミッションパイロット」  デイビッド・ゲイツ氏の証より

失望していたデイビッドは、翌日が特に大切な日であるのを忘れていました。しかし、神様は忘れておられませんでした。神様はご自分の愛する子を驚かすために、このアメリカ人をもう1日刑務所にとどめることになさったのでした。

その日、法律顧問はデイビッドの保釈金を検察官に渡しました。検察官はそれを自分の懐に入れてしまい、それから、自分の机に戻り、文書に署名し、それを顧問弁護士に手渡して、「われわれは訴訟を取り下げた。さあ、保釈金を払ってゲイツを出しなさい」と言いました。

その時になって初めてデイビッドは、彼が払った代価はほんのわずかであったことに気がつきました。すなわち、一生の自由のために彼が払ったのは、10日間の医療の仕事でした。彼は失望への誘惑に屈しなかったことや、他の人を助けるために最善をなすことを拒まなかったことを喜びました。刑務所の扉を開き、解放の鍵を彼に手渡した神様の方法が、保釈されるまではわかりませんでした。彼は、この医療の働きが刑務所を出る鍵になるなどとはまったく知らずに、他人への奉仕をしてきました。

デイビッドを刑務所から出すとき、看守たちは彼を立ち止まらせて署名させました。彼は門を出、そしてバタンと閉まる音を聞きました。その瞬間デイビッドは、刑務所に入った日に同じ音を聞いたことを思い出しました。突然彼は、それは自分に対して偽の証言をした人に接触しようと決めた瞬間だったことに気がつきました。この10日間、彼は自分について偽証をした入所者を探そうとしていたことをすっかり忘れていました。がっかりした彼は、自分の決意を簡単に実行できていたはずなのにと思いました。なぜ彼はその人のことを考えなかったのか?その人の名前もわかっていたのです。

デイビッドは法律顧問の車に乗ると、自分を訴えた人物に近づかなかったことについての失敗を話しました。「あなたがそうしなかったことを喜びなさい」と法律顧問は言いました。「政府があなたを訴えるように彼を用いたのです。犯行時にあなたと連絡をとったと彼が言ったので、彼らは、あなたが彼に近づくのを待ち構えていました。あなたの動きを全部見張りながら、彼らはずっとスパイをあなたにつけていました。彼らは、あなたが彼と話すのを一回も見ませんでした。あなたはいつも彼のそばを通り過ぎていました。あなたは何百人という人々と出会っても、彼のそばは通り過ぎ、一度も彼に目を向けることなく、彼もあなたを見ませんでした。もしあなたが彼を見たり、なぜうそをついたかと彼に言ったりしたら、今日、自由にされることはなかったでしょう」

デイビッドの悩みはたちまち喜びに変わりました。「主を賛美せよ!」と彼は声を上げました。「主は約束を果たし、暗証した聖句を私たちの頭に思い起こさせることができるだけでなく、考えを私たちの頭から出してしまうこともおできになります。私は、刑務所の門が私を閉じ込めた瞬間から、私を外に出すためにそれが開かれるまで、その人のことを忘れていました。今になってやっと私は、その人のことを考えたのです。私たちが主にすべてをゆだねるとき、神様はなんと驚くべきことを私たちの頭脳になさるのでしょう」

家に向かって山道を走る車の中で、デイビッドは感情を抑えることができませんでした。神様への愛と感謝で、彼は、(わたしたちのうちに働く力によって、わたしたちが求めまた思うところのいっさいを、はるかに越えてかなえて下さることができるかた-エペソ3:20)と、頭の中で繰り返していました。

それから彼は愛するベッキーを思い、もう一度彼女と子供たちに会う喜びのことを考えました。10日が10年のように思えました。目が覚めている間いつも彼につきまとった、刑務所に14年という恐ろしい考えは消えました。もうすぐ家です!

彼は時計で日付を見て、他のことを思い出しました。8年前のこの日、彼とベッキーは永遠に互いに真実であることを誓ったのでした。彼の心臓は早鐘を打つようでした。思慮深く、親切な彼の神様は、その記念日に彼を家に戻してくださったのです。

ベッキーはデイビッドの釈放のことは何も知りませんでした。皿を洗いながらキッチンの窓から外を見ていた彼女は、トラックが通り過ぎるのを見ました。彼女はその車のドアに公用車のシールがあるのに気がつき、それからそれがバックして家の玄関先に止まるのを見ました。すぐに彼女は恐怖で緊張しました。(さらに問題を起こすために、彼らがやってきたのかしら。)彼女は心配になりました。

彼女は手を拭いてドアに向かいながら、「神様、勇気をください」と祈りました。玄関のドアを開けたとき、彼女は見知らぬ人がトラックから降りるのを見ました。(わあ!とてもやせている、ひどくやせているわ)、彼がゆっくりと家へ向かって通路を歩いてくるのを見て、彼女はそう思いました。彼は小さな歩幅で歩きながら、スローモーションで動いているようでした。
突然、彼女はその人が誰だか気がつきました。走り出しながら、彼女は「デイビッド!」と、叫びました。

彼は腕を広げ、彼女はその中に倒れこみました。彼らはお互いを抱きしめて泣きました。やっとのことでデイビッドは、「ねえ、君、記念日おめでとう!」とささやきました。

彼らは腕を組んで、家に向かって歩きました。彼らがリビングルームに入ると、子供たちはその物音を聞きつけました。
「父さん、父さん」と彼らは叫び声を上げ、駆け寄ってきました。デイビッドは神様の愛とたいせつな家族の愛に包まれている喜びを知りました。
「おいで、子供たち。ひざまずいてイエス様に祈ろう。刑務所の扉を開いて父さんを家に戻してくださったことをイエス様に感謝しよう」。ベッキーは彼らを腕に抱きました。
「神様がそうしてくださるとわかっていたわ。私たちのお祈りを聞いてくださったのね。父さんがお家にいる!お家にいる!」とカトリーナとリナが、何度も何度も声を合わせて歌うように言いました。それから彼らは頭を垂れ、小さなカルロスが手を組むのを助け、デイビッドが天のお父様に心からの感謝をささげました。

子供たちを寝かしつけてから、ベッキーとデイビッドはその夜長い時間話をしました。
「ねえ、君、僕はとてもたくさんのことを刑務所で学んだよ。僕は変えられた。僕はやっと自分がこの世に何も所有していないことがわかった。すべてのものは神様に属するのだ。あの獄房の中で僕には家庭も、楽しい家族もなく、車も、飛行機もなかった。楽しむ本も、コンピューターもない。神様と、そして僕が神様にすべてを信頼したときに与えてくださった平安のほかには何もなかった。神様だけが僕に自由をくださった。神様は刑務所の戸を開き、大事な家族のもとへ帰れるようにしてくださった。神様の憐れみ深い愛のゆえに、今僕は、生活を便利にするために神様が与えてくださるものすべてを使うことができる。僕は命、健康、息、すべてを神様にお借りしている。僕のすべて、そして僕が持っているものはすべて、永遠に神様のものだ」

ベッキーが賛美を添えました。
「私が失望と恐れと戦っていたとき、私も神様への信頼を新たに学んだわ。私の信仰が揺らいだとき、神様に呼び求めると平安がきたの。この10日間、神様に完全に任せるということについて、なんと貴重な教訓を与えていただいたことでしょう。私たちが神様に頼ることができて、とてもうれしいわ。だって、神様は祈りを聞いて答えてくださるばかりか、何もかもが見通し暗く、希望がないように思えるときに、勇気を与えてくださるのだもの」

南メキシコでの状況は依然として緊張が続いていました。セブンスデー・アドベンチストの行政本部である南メキシコユニオンの指導者たちは、飛行機の返還を政府に要請しました。軍は、この貴重な飛行機を失うことになるだろうということに気がつきました。なぜなら、彼らは、メキシコ政府からその飛行機を返還するようにという裁判所命令を受け取ったからです。彼らはそれに応じるつもりはなかったので、別のことを企みました。彼らは無実のデイビッドを監獄に戻すことに決めました。これをするために彼らは、デイビッドが飛行機を不法目的のために使用するのを見たという文書に、ある村の全員にどうにか署名をさせました。デイビッドはその村に着陸したことなどなかったのに。それから彼らは彼の逮捕令状を送りました。

ある教会行政担当者が法律文書をとりに地方の警察本部に立ち寄ると、受付の警官が、「私たちはあなたがたの機長の逮捕令状を持っています。私たちは彼が無実だとわかっていますから、彼をここから早く出すことを薦めます。私たちは彼に会いたくありません。もし会えば、もう一度彼を逮捕しなければなりません。そうなれば軍は、今度は彼を刑務所から出さないでしょう」と言いました。

すぐさまその教団職員はデイビッドに忠告しました、「ゲイツ機長、できるだけ早く立ち去りなさい。持ち物を荷造りして、家から出ないでください。だれにも計画を話さないでください。立ち去れることになったらすぐに、私たちに連絡ください。そうすればあなたと家族がこの国から出られるように手配しましょう。夜出発するようにお勧めします、そうすればあなたの出発は知られないでしょう。あなたの持ち物は、あなたが行ってしまってから船で送ります」

感謝と悲しみという複雑な心境で、ゲイツ家族は、彼らが愛するようになった国を去りました。彼らは、「わたしはあなたに命じたではないか。強く、また雄々しくあれ。あなたがどこへ行くにも、あなたの神、主が共におられるゆえ、恐れてはならない、おののいてはならない」(ヨシュア1:9)という、神様の約束に信頼しました。信仰によって彼らは、南メキシコでの神様の働きを、神様が選ばれる他の人の手に委ねました。彼らは、神様が今度はどこに自分たちを遣わして、神様に仕えるように計画しておられるのか、熱心に待ちました。

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