7.長い、長い夜

6.暗雲の切れ目
8.再び家へ!

コラム 「ミッションパイロット」  デイビッド・ゲイツ氏の証より

獄舎のセメントの床の上で寝返りを打つデイビッドに、眠りは訪れませんでした。
彼は、何度も繰り返し祈りました。「主よ、なぜですか。これが、私のためのあなたのご計画ですか」。彼は再び、「わたしは神に信頼するゆえ、恐れることはありません。人はわたしに何をなし得ましょうか」(詩篇56:11)との声を聞く思いがしました。
「すみません、主よ。私はあなたが私と共におられることを知っております。そしてあなたは、あなたのご計画を実現されるということに信頼します。もっと幸福な考え方をするように助けてください」

再び彼の思いはベッキーへ、彼らの結婚当初の頃ヘと向かいました。彼は、ふたりが看護科の訓練を終えて正規の看護師になったとき、共に育んだチーム精神を思い出しました。彼女に励まされて、彼は専門の飛行訓練を完了できました。彼らは宣教奉仕への召しを受けなかったので、ペルーのプカルパで、報酬なしのボランティア宣教師としてデイビッドの両親と共に働かないかという招きを受け入れました。6ヶ月の間、彼らは密林の人々と共に働きました。

デイビッドは、彼らがある日共に祈った祈りを思い出し、ほほ笑みました。「神様、あなたの宣教師としての働きをするのに、どのように自給し、続けていったらよいか良い考えをお与えください」

翌日デイビッドは村の中で、「我らの信頼は金にあり」という言葉を縫い付けた帽子をかぶっているひとりの男を見ました。彼は急いでその男の所に行き、「この辺のどこで金を採っているのですか?」と尋ねました。
「川の中だよ」
「どうやるのか見せてくれませんか?」
「いいとも、かまわないよ。大変な仕事だが、時間をかけてやる気があるなら、だれでも金は採れる」。デイビッドはベッキーに話すのが待ちきれませんでした。
「やるのは面白いと思う。神様の助けで食べ物や、病人のための薬を買うお金を稼げるよ」

そこでデイビッドと、プカルパで航空機整備のボランティアをしていたティムは、2週間の休暇期間にこの冒険をしてみることに決めました。それは金鉱掘りとしての人生経験をするには十分な時間です。ベッキーとティムの妻ジェニーはプカルパの空港に残りました。


その鉱山労働志願者たちは、プエルトインカの小さな町から遠く離れた川岸で暮らし、毎日掘り続けました。1日中彼らは泥を洗い、金をより分けました。そして、神様の助けと多くの重労働によって薬と食物が買える十分な金を得ることができると確信したのでした。

妻たちふたりは、夫たちがいないのをさびしがり、彼らを訪問することにしました。
ベッキーは義父に、「次の飛行のどれかに私たちを乗せて行き、デイビッドとティムの働いているところで降ろしてもらえますか?」と頼みました。
「できるとも。木曜日にその近くに行くよ」

デイビッドは、その飛行機から愛する妻が降りてくるのを見たときの喜びを思い出しました。その夜彼らは砂の上にシーツを広げました。寝場所は寝袋の上をプラスチックの防水シートで覆って作りました。3ヶ月の間雨がなかったので、彼らは何の心配もしませんでした。しかしその夜天候が変わり、彼らは雨で目が覚めました。あっという間に、やわらかな雨粒は激しい熱帯雨に変わりました。

ベッキーは毛布の1枚を丸めて、何時間も抱きかかえていました。そして何とか濡らさずにすみました。男たちは防水シートから水を汲み出し続けましたが、すぐにびしょ濡れになってしまいました。

やっと雨が止み、濡れなかった1つの寝袋の下に、彼ら4人は皆体を丸めました。なんと惨めな夜だったことか!翌日、金曜日、女性たちは濡れて砂だらけになったシーツと毛布を川で洗い、それを広げて乾かしました。

そこに、エマーソンという農夫とその手伝い人たちが長いカヌーでやってきて、止まって話しかけました。デイビッドは、「川の水位は上がるでしょうかね?」と尋ねました。
「いや、心配することはない。たぶん川はもう最高水位まで達しただろうから」と彼は返事をしました。

ティムとデイビッドは、その夜どこで眠ろうかと話し合いました。「砂場を避けて、草むらに小さいけどちょっとした避難場所を作ろう。そうすればきっとよく眠れるに違いないし、一緒に楽しい安息日を過ごせるだろう。ジャングルでバルサの木を取ってくるのはたやすいことだ。プラスチックの防水シートは屋根に使える」

避難所を完成した彼らは皆、大喜びしました。「雨よ降れ、もう大丈夫だ!森のはずれの居心地良い避難場所で濡れずにすむぞ」とデイビッドは叫びました。

前夜の睡眠不足でひどく疲れ、彼らは金曜日の夜は早く就寝しました。澄んだ空は、もう雨は降らないという保証のようでした。ところが午前2時ごろ、彼らは、水に浮いているような感じで目が覚めました。デイビッドが手を伸ばすと、その手は水の中に12センチほど突っ込みました。

「たいへんだ!」とデイビッドは叫びました。「川の水位が急上昇しているに違いない。大雨が山の上流で降ったのだ」。暗闇の中で彼らは荷物を全部つかみ、木の根につまずいたり転んだりしながら、丘に向かって水中を進みました。しかし川は彼らに追いついてきます。その夜水面は25フィート(7.62メートル)上昇しました。彼らは木々にできるだけの物をつるして、食物、発電機、そして早くしないと川に流されてしまうだろうその他の品々を取りに戻りました。またも惨めな夜!

翌朝、水浸しにならなかった少しの食物で乏しい朝食をとった後、彼らは森の中で一緒に安息日学校を楽しむことにしました。その後、もう雨は降らないと保証したエマーソンが、船一杯の男たちと一緒にその川を通りかかり、水の中に浮いている彼らの小さな家を見つけましたが、人の気配はありませんでした。 (大変だ!)と彼は思いました。(外国人たちに何か起こったのか?わしは、川の水位は上昇しないと言ったのに、上がってしまった。)

エマーソンはボートを岸につけ、いなくなった宣教師たちを皆で捜し始めました。歌声を聞いた彼らは、その声をたどり、デイビッドたちを見つけました。彼は大きな笑顔で、「どうぞ、わしの家においでなさい。あなたがたの服も、寝具も、食料もみんなびしょ濡れだ」と言いました。

「安息日は私たちの休みの日ですから、今日はこれらの品物を全部動かそうとは思いません。私たちは安息日にはそういう仕事はしないのです。明日伺いましょう。今日はここで何とかできると思います」
「わかった。あなたたちはセブンスデー・アドベンチストで、安息日には働けないんだな」
男たちの方に振り向いて、彼は命令しました。「彼らの荷物を持ってカヌーに乗せてくれ」

たちまち、11人の男たちが彼らの荷物や器具類を全部持ってカヌーに積み込みました。デイビッドはほほ笑んで、「まるでぼくらの召使がみんなで仕事をしているみたいだ、ぼくらが安息日を聖く守っている間にね」とベッキーに言いました。

エマーソンは、川からずっと上の方にある丘の上の、居心地のよい自分の家に彼らを連れて行きました。彼の人懐っこい妻リナは彼らを歓迎し、おいしい食事と眠るのに快適な場所をすばやく用意してくれました。二組の夫婦は、この愛すべきカトリックの農夫のもてなしを楽しみました。この友情は後に、デイビッドとベッキーに大きな祝福をもたらすことになるのでした。

彼らは、プエルトインカの辺境の村々で働くことは非常に報われるものだということを発見しました。医療手当ては直ちに人々を霊的興味へと導きました。

たびたび不足する医薬品や食料の補給をしているうちに、デイビッドとベッキーは、病人の世話をするために多くの小さな村々に飛んで行く飛行機の必要が見えてきました。ある日デイビッドは、一つの考えで妻を驚かせました。

「ねえ君、合衆国へ行って、テネシーのマジソン病院で看護師として働き、飛行機が買えるだけのお金を稼ごう。もし安息日には働かないで、できることすべてをしますという約束を神様とすれば、きっと祝福してくださる。」

「僕は、もっとお金が欲しいからというだけで、安息日に時間外勤務をする看護師を見てきたが、そうしたいとは思わない。もし僕らが神様の日に病人の世話をしなければならないのなら、喜んでする。でも安息日に稼いだものは皆神様のものだ。僕らはきっと、できる限り日曜から木曜までのスケジュールに入れてもらえるよ」

そのような決意を心に抱き、デイビッドとベッキーはテネシーに戻って病院で働き始めました。神様は彼らを経済的に祝福なさいましたが、彼らのこの決意には代償もありました。管理責任者は彼らのスケジュールを、ほとんど毎週別々の階で働くように組みました。

その管理責任者は、「私たちは家族を同じ階で一緒に働かせないのです」と彼らに言いました。「過去の経験からそれではうまくいかないことがわかったのです」

ある日、緊急事態が生じ、スタッフはこの夫婦を一緒に働かせるしかなくなりました。
彼らは、デイビッドとベッキーが調和のとれたチームであることがわかりました。その後ベッキーは病院の廊下でお互いにすれ違うときに、デイビッドがほほ笑んで優しい言葉をささやくことにスリルを感じました。そう、恋人たちは仕事の間でも彼らのロマンスを続けることができるのです。病院で6ヵ月働いて、彼らはセスナ150という飛行機を買うだけの貯蓄をしました。

彼らはその飛行機で宣教地に長距離飛行をする準備のためのすばらしい時間を持ちました。デイビッドと友人はペルーへ向けて小さな飛行機を飛ばし、それからベッキーのところに戻りました。彼は彼女の言ったことを思い出しました。「もう一度新婚旅行をするみたいね。私たちはなんという楽しみを味わえることかしら!」

デイビッドとベッキーがペルーに飛行機で戻ると、自分の家に連れて行ってくれた親切なあのカトリックの農夫エマーソンが、彼らの住まいにと小さな家をくれました。親しい交際がこの家族との貴重な友情を生み出しました。ベッキーとデイビッドは最初に生まれた娘にエマーソンの親切な妻の名をとって、リナと名づけました。勤勉でよく働くこの人は、彼と同じく信仰に生きるように彼らを奮い立たせました。彼とその4人の息子たちは、彼らの周囲にいる困っている人にはだれにでも食料や医薬品を与えて、イエスがマタイ25章40節でおっしゃった、「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである」との原則を実行しました。

もっと医療の働きの必要があることを知り、エマーソンはデイビッドとベッキーに一番良い土地の一部を選んで売ってくれました。後にデイビッドはその土地をベッキーの両親に売り、彼らの医療技術でクリニックは繁栄しました。そこで7年間働きながら、彼らは28,000人の患者の手当てをしました。これは、世話をしてくれた地方の一農夫の親切のゆえに起きたことでした。

暗闇の中でセメントの床に横たわり、デイビッドは頭を振りました。彼は今では長年の経験を有する専門パイロットです。彼は、神様の誠実な保護に驚くばかりでした。(私たちは、小さな動力不足の2座席の飛行機をペルーのジャングル一帯に飛ばし、粗末な滑走路に着陸する間ずっと天使を忙しくさせていた)と彼は思いました。(辺境の地にいる働き人のところに食品や医薬品を運び、治療を受けさせるために患者を運ぶのはなんという喜びだったことか。この喜びを知るの人はごくわずかだ。人々はお金なしで敢えて前進することを恐れている)。

ある日ペルーのジャングル上空を飛んでいたときに、神様はデイビッドに、自分の飛行機の整備の仕方を学ぶべきだということを強く印象づけられました。「ねえ君、僕らはもっと役立つように、合衆国に戻り、さらに訓練を受ける必要があるね。何か飛行機に異常が起きたとき、僕はどうやって修理したらよいか知っていなくちゃならない。良い修理工はジャングルの中では見つからない」

夫婦はケンタッキーへ移動し、そこでデイビッドは2年間、航空機管理と整備を勉強することができました。ベッキーは妊娠したので、彼らはどちらもパートタイムの看護師の仕事を見つけることができませんでした。彼らは、教育は時には大きな犠牲を要求するものだということを学びました。最初の数ヶ月間、彼らは州の公園に置いた小さなキャンピングトレーラーで生活しました。2年目に、ふたりはマンチェスターのアドベンチスト病院での仕事を見つけました。そこで、娘がふたり、リナとカトリーナが生まれました。

デイビッドの勉学課程が終了する少し前のことですが、彼は友人と一緒に飛行機の修繕をしていました。先が針のように尖ったペンチを手に握っていると、「力いっぱい引っ張ってくれ」と相棒が言いました。デイビッドが力いっぱい針金を引っ張ると、それがすべりました。彼はコントロールを失い、両手でそのペンチを左目に刺してしまいました。彼は赤い閃光を見、崩れ落ちました。すぐに、彼は自分のパイロット生命は終わったと思いました。彼は頬を流れ落ちる液体に触ろうとしました。ところが、触れた頬は乾いていました。

けれども、左目は何も見えませんでした。彼はこわごわと手を伸ばし、指が目の中に入ってしまうだろうと覚悟しながら、自分の指で目を押さえました。ところが手ごたえがありました。「ああ、主よ、私は信じることができません。目がまだあるに違いありません」

彼は浴室に走り、鏡を覗いて見ました。それから思わず声をあげ、「まぶたに大きな穴が見える。尖ったペンチは僕の目にぶつかって、まぶたを刺し、眼球をひどく傷つけずに、別の側に出たのだ!」と言いました。

デイビッドは、その時自分がした献身の祈りを思い出しました。「主よ、あなたは私の命を赤ん坊のときに救ってくださいました。私が年を経た今、あなたは、視力を救われました。私が持っている何ものも自分のものだとは思えません。もしあなたが、伝道地で私が飛行することをお許しになるのであれば、またもしあなたが海外で奉仕する機会を与えてくださるなら、私の持っているものすべてと私の人生を完全にもう一度あなたにおささげします。もし私が命を失うのであれば、それはあなたの問題です。あなたはすでに何回も私にそれを取り返してくださいました。あなたは私が失ったものを戻してくださいました。あなたが回復してくださったものは、全部あなたのものです」

専門パイロット、航空機修理工、そして正規の看護師として、宣教師の準備を終えたデイビッドは、飛行機を使った教団の伝道プログラムが世界中で閉鎖しつつあるのを見て、考えるようになりました。彼は自分の受ける教育分野を広げる必要を実感しました。「ねえ君、経済や政治の状況は、ペルーで教会が行っている飛行機を使った伝道プログラムを間もなく閉ざすかもしれない。コンピューターが重要になりつつある。優れたコンピュータープログラマーやオペレーターがとても求められているよ。伝道現場で必ず必要とされるようになるから、僕はその分野での専門訓練を終える必要がある。」

そこでデイビッドは合衆国で勉学を続けました。その間彼とベッキーは、看護の仕事で自分たちの生活を支えていました。彼はコンピューター科学の専攻で学士号を取得しました。それからソフトウェアエンジニアリング専攻の理学修士号をとるために勉強を始めました。通信コース、遠距離教育、そして教室での授業を組み合わせて、6年以上かけ、彼はやがてその勉学過程を終了し、卒業のために合衆国へ戻ることになりました。

デイビッドがさらに多くの資格を得た今、セブンスデー・アドベンチスト世界総会事務局の職員たちは、彼にブラジル、ペルー、メキシコの3国が彼の奉仕を求めているという情報を伝えました。神様はどれを彼とベッキーのためにお選びになるでしょうか?一番大きな必要があるのはどの国でしょうか?

「私たちはあなたの助けが必要です、神様」と彼らは祈りました。「あなたのお約束を思い出してください。『あなたを召したかたは忠実であって、それをされるであろう』。友人たちはブラジルとペルー両国を優先するように薦めます。けれども私たちは、南メキシコの22床の病院と看護学校が、毎年ロマリンダから来るボランティアの医学生と歯科学生を援助できる管理者を必要としていると知ったばかりです。その仕事に必要なのは、その地域の多くの村々へ補給品を運ぶのに飛行機を飛ばし、それらの若い人たちの相談にのるパイロットです。私たちはそのような責任を負う資格があるでしょうか?」

ベッキーがつけ加えました。「もうひとつのお願いは、神様、南メキシコユニオンには今宣教師のための特別予算がなく、合衆国での手当もないとのことです。私たちは毎月たった300ドルの低賃金で暮らさなくてはなりません。これが、養わなければならない小さな娘ふたりがいる私たちのための、あなたのご計画でしょうか?私はピリピ4:19を信じます。『わたしの神は、ご自身の栄光の富の中から、あなたがたのいっさいの必要を、キリスト・イエスにあって満たして下さるであろう』」

そして彼らは、南メキシコで彼らを導いてくださるように神様に信頼しながら、有利な方の要請を退けました。

獄房の床に横たわって、デイビッドはこの困難を抱えた地域で奉仕してきた1年半に、神様が彼らに与えてくださった多くの挑戦と喜びを思い起こしました。養子に迎えたメキシコの少年、小さなカルロスは、彼らに途方もなく大きな喜びをもたらしました。しかし、もし神様が彼らを導いて来られたのであれば、なぜ飛行機がハイジャックされ、デイビッドが有罪(おそらくは14年間の服役)とされるのをお許しになったのでしょうか?

このような悩ましい疑問が頭の中に渦巻き、デイビッドは神様の尊い約束を思い出そうとし始めました。(神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、わたしたちは知っている)(ローマ8:28)。(神には、なんでもできないことはありません)(ルカ1:37)。(恐れてはならない、わたしはあなたと共にいる。驚いてはならない、わたしはあなたの神である。わたしはあなたを強くし、あなたを助け、わが勝利の右の手をもって、あなたをささえる。)(イザヤ41:10)。

「十分です、神様。私たちの将来をあなたのみ手にお任せできるとわかりました。あなたの愛と力にすべてを委ねることからくる平安を感謝します」
乱れた心は安らぎ、デイビッドはぐっすりと眠りました。

6.暗雲の切れ目
8.再び家へ!