4.ベッキーを想って

3.刑務所で
5.挑戦

コラム 「ミッションパイロット」  デイビッド・ゲイツ氏の証より

2日目の晩、寝床を整えてから、ふたりの囚人の手をとって祈っていると、デイビッドは多くの目が自分をじっと見ているのがわかりました。横たわると部屋に沈黙がたちこめ、彼はイエスのやさしい臨在を感じました。

しかしなかなか眠れませんでした。彼は考えるのを止めることができませんでした。飛行機は彼の人生の中で大部分を占めており、今彼の思いは、逮捕と入獄の理由となった、失ったばかりの1機と、操縦してきた別の何機かの飛行機へと向かいました。神様が初めての飛行機を用いて、どんなに祝福してくださったかを思い出しました。少年の頃、よく父親と共に飛行しながら、高校の最終学年のうちに飛行訓練を受けることを待ち焦がれていました。その訓練費用を得る方法を探そうと決めた彼は、カレッジで仕事を見つけました。

すぐに彼は飛行機を所有している友人ふたりとパートナーになりました。長時間の労働をしてやっと支払いを終え、飛行機を買いました。彼は18歳で卒業する前に、自分の小さな飛行機を持ったのでした。

デイビッドが飛行機の操縦士免許を取る前に、ある日、辺境パイロットの経験を積んだ彼の父親が、デイビッドの飛行機で飛ぼうと、ジョージア州北部のジョージア・カンバーランド・アカデミーの舗装された小さな滑走路へ彼を連れ出しました。ゲイツ牧師は、滑走路の隣の畑でとうもろこしを刈っているコンバインに注意を払いながら、着陸練習を2回しました。

デイビッドは自分で着陸してみたいと思いました。「お前には扱いが難しいよ」と父親は忠告しました。「滑走路のそば近くで働いているコンバインのところに着陸してはいけない。そのあたりの歩道からそれなくてはいけない。お前が操縦する前に自分がまず着陸して、少し移動してくれるようにあの人に頼もう」

父親は通常の着陸をしたのですが、その直後、左の着陸ギアが折れ曲がり、左の車輪が飛行機からはずれてしまいました。左翼が落ちて、彼らはものすごい速さで畑を横切っていきました。輪を描いて動いていたコンバインが、彼らの前に現れました。飛行機の速度をコントロールできないまま、ゲイツ牧師は機首を下げて、時速70マイルでコンバインに真っ向からぶつかりました。このとっさの操縦さばきで、コンバインの運転手にはぶつかりませんでした。

Young-Davidそれから死のような静寂!デイビッドと父親が正気を取り戻すと、ふたりの切れた頭や腕から血が滴り落ちていました。肩にかけた固定ベルトが彼らの命を救いました。飛行機とコンバインはどちらもひどく壊れてしまいました。

近所の救急救命室の医師は彼らに包帯を巻きつけ、「傷はたいしたことはないが、全治までには時間がかかるでしょう」と言いました。

デイビッドは、回復するまでの間に、1学期間帰省していたベッキーから手紙を受け取りました。

「あなたの飛行機が壊れてしまって残念でしたね。私はいつも操縦の仕方を習いたいと思っていたの。そしてあなたの飛行機で習えたら、と考えていたのよ。だれも大けがをしなくて本当によかった」

飛行機には保険がかけてあったので、デイビッドは代わりの飛行機を購入しました。かすかな希望がデイビッドの頭にひらめきました。神様は、この事故を用いてベッキーとの前向きな交際へと導き、万事を益としてくださるだろうか?以前のガールフレンドは彼を離れて行ったので、彼女の手紙に返事を書くのは自由でした。すぐにふたりは、頻繁に手紙のやり取りをするようになりました。

その後しばらくして、ベッキーと彼女の両親がこのパイロットたちを見舞いにやって来ました。彼らが帰った後、デイビッドの父親が言いました。「お前に知らせることがある。ベッキーの母親が母さんに、ベッキーは、ボーイフレンドが彼女の人生目標である伝道活動にあまり興味を示さなかったから、別れたばかりだと言ったそうだ。デイビッド、ベッキーは今でもまだ、お前とした約束のことを話しているらしいよ」

Promo「父さん、本当!僕はそのことでしばらくがっかりしていたんだ、もうベッキーとのチャンスはないと思ってね。それはすごいや」

デイビッドはピリピ1:6の約束を思い出しました。「あなたがたのうちに良いわざを始められたかたが、キリスト・イエスの日までにそれを完成して下さるにちがいないと、確信している」

彼は祈りました。「神様、ありがとうございます。あなたにとって困難なことは何もありません。もしあなたがベッキーと僕が一緒にあなたのために働くのをお望みであるなら、どうしたらよいかをどうか教えてください」

いつでも、すぐ行動に移すデイビッドは、失望から抜け出て、山頂にいる気分になりました。彼はベッキーに手紙を書き、投函しましたが、4日後に戻ってきました。興奮していたので切手を貼り忘れていたのでした。

彼らの友情は急速に発展しました。ベッキーは、デイビッドのカレッジデールアカデミー卒業式に参列するために車でやってきました。式場の中央通路を行進してくる彼を、彼女はとても誇らしく思いました。式の後、冷たい風の吹く戸外に立って、彼女は震えをこらえていました。彼が卒業ガウンを脱いで優しく彼女の肩にかけてくれたとき、彼女の心臓は早鐘のように打ちました。

すぐに彼らは、伝道に対する互いの関心を話すようになりました。ベッキーはカレッジで医療技術を勉強していました。ある夕方、彼らがカレッジ構内を歩いていたとき、デイビッドは彼女にチャレンジを投げかけました。

「もし宣教師になりたかったら、僕らふたりは看護師になる必要がある。神様が僕らをどこに召されても、看護の技術は人々を助けることができるから」

「でも、デイビッド、私は絶対看護師にはならないといつも言っていたのよ。私たちの両親が看護師なのだから、家族の中に医療専門家はもう十分だと思わない?」

デイビッドは黙ったまま、ベッキーに考える時間を与えました。

「本当に、私は看護を専門にしようとは思ったことがないの」と彼女はゆっくりと話を続けました。「でも、もし私が病棟で働かなくてもよいなら、病人を助ける知識はきっと、私たちの伝道奉仕を強力にするでしょうね」

「僕も看護を専門にする気はないけど、ただ人々を助けるのに貴重な道具になると思う」
「いいわ、デイビッド、やってみるわ。看護科へ行って、登録しましょう」

看護科主任は頭を振りました。「気の毒だけど、もう今年受け入れることのできる学生は全部受け入れてしまったの。補欠のリストに載せることはできますよ。あなたたちの申し込み番号は78番と79番になるわ。でも、適性確認のための試験は受けられますよ」

数日後、デイビッドとベッキーはその結果をもらうために看護科に戻ってきました。

「あなたたちはよくやったわ」と主任は寸評しました。「補欠リストの7番と8番まで飛び越えましたよ。でもまだ、今年受け入れられるリストまでにはほど遠いわね」

3週間後、カレッジ登録の最初の日に、デイビッドはベッキーに提案しました。「僕は神様がこのことを望んでおられるという確信がある。今日は1科目も登録せずに、待って祈ろう」

2日目の朝、彼らは再び頼みに行きました。

「残念だけど、チャンスはありません」

なおも、熱心なふたりは、神様はすべてのことを可能になさるということ(マルコ10:27参照)を思い起こしながら、1日中待ちました。

「もしこれが私たちに対する神様のみこころなら、神様は解決してくださるでしょうね。そうでなければ、もっとよいプランを示してくださるわ」とベッキーは確信をもって言いました。

「登録は4時で終わる」とデイビッドは時計を見ながらぼそぼそと
言いました。「登録までにちょうど5分残っている。何か進展があったかどうか見に行こう」。彼らは看護科指導教官の机のところに行きました。

看護科主任は、「空きが2つ残っているけれども、女生徒が2名来ると思う」と言いました。

「登録期間は2日間でしたが、彼女たちはまだ来ません。僕は学生部長に話そうと思います」とデイビッドが意見を言いました。

「あなたがそうしたいなら」と返事をして、彼女は登録する部屋の向こう側にある学生部長の机を指さしました。デイビッドは、伝道の場での奉仕のためによりふさわしくなるために看護科をとりたいという、彼らの希望を部長に伝えました。

「問題があります」とデイビッドはつけ加えました。「もし今年
のクラスを取れなければ、僕たちはもう1年待つことはできません。僕たちは看護科をとりません。今とるか、それとも前に計画していた専門分野に進むか、どちらかです」

「ついてきなさい。看護科主任と話をしよう」

主任の机に近づきながら、部長は、「まだ登録しておらず、連絡のない学生が2名いるというのは本当かね?もしそうなら、今日はもうこんなに遅くなっているのだから、このふたりを看護科に入れてよいと思うのだが」と言いました。

登録終了のほんの数分後に、デイビッドとベッキーは署名をし、2年間の看護科コースに受け入れられたのでした。登録用の机から離れながら、ベッキーはデイビッドの方に振り向きました。

「神様はすごいこと!これで私たちは一緒に看護を学べるわ。最終学年でも専攻を変えることを、私、なんとも思わないわよ。これが神様のみこころだとわかるの」

ふたりは何もかも一緒にし始めましたが、ベッキーは看護科を終了するまでは結婚を待つべきだと感じていました。

デイビッドは反対しました。「ベッキー、君は何でもぐずぐずし
ている。君はただ早く動きたくないだけだ。たぶん僕は早く動きすぎるかもしれないけど、君は反対側に引き戻そうとしている。君は鋤で、ぼくはトラクターじゃないかな」

「神様は、私たちにはバランスが必要だということをご存知なのではないかしら。私は主を待ち望みたいと思うし、あなたはパウロに似て、いつも競技を走っているのね」と彼女は笑い、そしてデイビッドは反論しませんでした。

数ヵ月後、クラスが始まりました。彼らは友人の結婚式に、花嫁の付き添い役と花婿付き添い役として出席しました。祝いの席でひとりの友人が尋ねました。「君たちは結婚を予定しているのかい?」その質問を耳にしたベッキーの両親は、「彼らは、結婚を予定していると、今にも私たちに言うと思っている」と答えました。

「どういうことですか、『今にも』って?」とデイビッドが口をはさみました。「ベッキーはカレッジを終えるまで待ちたいと言っています。彼女の計画は1年か2年先なのに、『今にも』なんて、僕たちがなぜ考えられます?」

デイビッドがその年のクリスマスに家に帰ると、父親は彼を問い詰めました。

「お前はもう婚約したのかい?」
「いいえ、まず父さんに話をせずに婚約などしませんよ。父さんを尊敬していますから、意見を聞きます」
「お前はベッキーと結婚しようと考えているのかい?」
「ええ、僕は、彼女と結婚するつもりです」
「愛し、結婚したい人を確かに見つけたというのかい?」
「ええ、そうです。僕は彼女を見つけました。彼女はちょうど僕が求めている人です。僕らはふたりとも主を愛していて、宣教師になって助けを必要としている人たちのために奉仕するという、ひとつの大きな目標があります」
「そういう場合には、お前が正式に彼女に申し込んでいなくても、婚約したようなものだ」
「そうですね、僕らは気持ちの上では婚約しました。僕は彼女のものだし、彼女は僕のものです」
「母さんと私は話し合って、お前たちは理想的な組み合わせだと思った。お前たちがボリビアで育っていた間に、神様はお前たちふたりをお備えになったのだ。お前たちはいつも友だちだった。だが、気がかりなことがある。もしお前たちの関係がもっと親密になって、長く待ちすぎると、間違いを犯すかもしれない。それはお前たちの結婚をだめにするか、少なくとも傷つけることがあり得る。あるいは、お前たちの関係を保つために、数年待っている間に、お互いから離れるかもしれない。どちらにしても、私たちはそれには賛成しかねる。だから、もしお前たちが結婚したいのなら、私たちは祝福し、許すよ」

驚いたデイビッドは、今や、双方の両親共、彼らの結婚を支持していることがわかりました。すぐにデイビッドはベッキーに電話をかけ、「今忙しいかい?なんて美しい日だろう。僕はベッキー・スーをスピン(きりもみ降下)に連れ出せると思うよ」と言いました。

「面白そうね」と彼女は応じました。「そこで会いましょう」。彼女は、彼のことを考えてほほえみました。彼女は、彼のちゃめっ気ある茶色の目、長いまつげや少し口元がゆがむほほえみをどんなに愛したことでしょう。彼女が彼を、「背高で、黒髪のハンサム」と呼ぶようになったとき、彼は彼女を「小柄で、ブロンドの美人」と呼び始めました。小さなセスナ140に何と命名したかを見せようとして、興奮した彼が自分を連れ出した日のことを、彼女はまだ覚えています。飛行機の鼻先に大きな字で、「ベッキー・スー」と書いてありました。

しばらくして、ベッキーは空港に着き、デイビッドが「ベッキー・スー」での飛行の準備をしているところを見つけました。「すぐ君のところに行く」と彼はほほ笑んで言いました。彼はすばやく作業を終え、彼女のそばに歩いてきました。やさしく彼女の手をとり、彼女の青い目を見つめながら、「僕は前に一度君に頼んだけど、『ベッキー・スー』のそばでもう一度頼みたい。僕と結婚してくれる?」と彼は言いました。

ベッキーは美しい笑顔を見せました。「あなたと結婚したいわ」と彼女はささやきました。デイビッドは、心臓が幸福で破裂しそうに思えました。「飛行しながら詳しいこと話そう」と彼は言いました。彼は、どこを飛んだのか覚えていませんでした。ただ、自分の横に座っているこの愛らしい少女が、永遠に彼のものとなるのだということがわかりました。

デイビッドが最終滑走路へ向かって行くと、黄昏の空に沈んでいく太陽の周りに鮮やかな赤とオレンジ色が広がりました。ベッキーは目前の美しさを喜び、「見て、神様はこの特別の瞬間を祝うために世界を飾っておられるわ」と叫びました。着陸寸前に彼は、ベッキーのほおにキスをしました。初めてのキスでした。

「少し、早過ぎないこと?」と彼女は問いかけました。
「全然」と彼は平気で言いました。
「デイビッド、私は、次のキスはバレンタインデーまで待ってほしいわ」
「情けないお勧めだ」と彼は、彼女にほほ笑みかけながら言いました。
「でも、それが君の考えなら、僕はどうしようもない」

彼らが正式に婚約する前に、デイビッドは彼女の両親の許可を求めることにしました。そこで彼らは一晩中車を走らせて、1979年1月1日の早朝に病院に着きました。彼女の父親は医療技師として、母親は救急室の看護婦として共に夜勤で働いているところでした。

デイビッドが最初にベッキーの父親を見つけました。

「こんな朝早くに、ここでお前たちはいったい何をしているんだい?ここにはクリスマスに来たばかりじゃないか」
デイビッドは、勇気をふるって、唐突にしゃべりました。「僕はあなたの娘さんと結婚したいのです」

デイル・デクセンはほほ笑みました。「考えさせてくれたまえ」彼は一息つき、目をパチパチさせました。「さてと、本当のことを言うと、もうそのことについては考えていた。私はうれしいよ」
幸福なふたりは、次にベッキーの母親パットが働いている救急室へと急ぎました。その病院で治療をさせないという保険の方針のことでわめいている、難しい患者にかかりっきりだったパットには、彼らが見えませんでした。

Wedding彼らは、彼女の機転のきいた言葉を聴きました。「あなたの手当てをしたいのですが、あなたの保険がそうさせてくれないのですよ。どうか1、2マイル先の病院へ行ってください。そうすればあなたを診てくれますから」

突然パットは顔を上げて、「ベッキー、デイビッド」と叫びました。そして彼らに駆け寄りました。その女性は、だれもいないのに叫んでいることに気づくまで、わめき続けていました。
パットはすぐに感づきました。「あなたたちふたり、婚約するのね」と彼らを抱きしめながら、興奮して尋ねました。彼らの顔が答を告げていました。

ベッキーの姉妹ベッツィーと、やはりボリビアで成長した宣教師である彼女の婚約者テッド・バーグドルフも、まもなく結婚する予定でした。彼ら4人は、テネシー州カレッジデイル近くのゲイツ家農場の、池の近くにある見晴台の木陰でダブル結婚式をすることに決めました。満開のバラの花が式場を飾りました。ベッキーの父親デイルは、娘と腕を組んで通路を歩いてきました。

牢獄の固いセメントの床に横たわり、デイビッドは愛する花嫁のことを再び思いめぐらしました。結婚式を執り行ったときの、父親と祖父の言葉が耳に聞こえる気がしました。彼女の優しい声が「誓います」と言っているのを思い出して、心臓がどきどきしました。

1979年1月17日に、ベッキーは彼の人生の伴侶となりました。もはや年齢は問題ではなく、彼はちょうど20歳になり、彼女は23歳でした。彼らはキリスト・イエスにあってひとつとなりました。
大きないびきがデイビッドの空想を破りました。やっかいな現実が彼を再び打ちのめしました。いつベッキーに再会できるでしょうか?この牢獄の壁の中にどのくらい閉じ込められるのでしょうか?

3.刑務所で
5.挑戦